約12年ぶりにWTI(West Texas Intermediate =ウェスト・テキサス・インターミディエイト)先物価格が1バレル=30ドルを下回り、原油価格の低迷は留まるところを知りません。
なぜ原油価格の低迷が続いているのでしょうか。今後回復する見込みはあるのでしょうか。今回は原油価格低迷の原因と、その先行きについて見てみましょう。

低迷が続く原油価格と中東産油国への影響

リーマンショックによって一時期大きく落ちこんでいたWTI原油価格ですが、その後の中国の需要増と世界経済の回復にともない、1バレル=90ドルから100ドルの大台を維持していました。
しかし2014年の後半になると急速に価格が下落し、2015年前半には1バレル=60ドル台、2015年末には1バレル=30ドルから40ドル台まで落ち込み、年が明けた2016年には12年ぶりに1バレル=30ドルの大台を割りこむこととなります。

これにより大きな影響を受けたのが産油諸国です。
世界最大の埋蔵量を誇るサウジアラビアが国営石油企業であるサウジアラムコの上場によって資金調達を検討していることをはじめ、世界の主要な産油国は高値で安定していた原油価格に頼った財政運営を切り詰めながらできるかぎり歳入の確保に努めています。

原油輸出が歳入の大きな部分を占めている国は、原油価格の下落による直接の歳入の減少と、国家財政への不安から進んでいる通貨安に対抗するための市場介入による外貨切り崩しによる資産減少という二重苦に悩まされています。
原油輸出に頼る経済構造をしている中東諸国がもっとも大きな影響を受けている今回の原油価格の下落ですが、主要国の中でもロシアをはじめとする資源輸出が歳入の大きな部分を占めている国々にも影響が出ているため、予断を許しません。

原油価格低迷の理由はなにか

今回の原油価格低迷の直接の理由としてよくあげられているのが、中国の景気減速にともなう需要減少ですが、より大きな理由としてアメリカによるシェールオイルの商業生産開始があげられます。
頁岩(シェール)層に埋蔵されている原油を採掘するシェールオイルは、豊富な埋蔵量が確認されているアメリカとカナダによって採掘方法が確立されました。
シェールオイルを含めたアメリカの原油生産量は2008年には日量500万バレルでしたが、2014年には日量800万バレルを超え、IEA(International Energy Agency = 国際エネルギー機関)は「今後5年間の世界の原油需要はアメリカのシェールオイル生産だけでまかなうことが可能となっている」との予測を発表しています。

このシェールオイルの商業生産の開始によって、市場の原油の需要に対して供給が大幅に上回るようになりましたが、OPECではそれまでの市場の需給に合わせた生産と価格の調整という戦略を諦め、採掘量を据え置くことで採掘が高コストとなるシェールオイルの生産企業の疲弊を狙う戦略をとることを余儀なくされています。
このため市場の需要に対して供給が大幅に上回る状態が続き、2014年後半からの原油価格の下落と低迷の大きな原因となっているのです。

原油価格が回復する見込みはあるのか

世界経済に大きな影響を与えつつある原油価格の低迷ですが、今後回復する見込みはあるのでしょうか。

現在の原油価格の低迷は、中国の需要減と市場在庫のダブつきという2つの原因が上げられています。
特に大きな原因と考えられている市場在庫のダブつきは、OPEC加盟国がシェールオイルの価格競争力を削ぐために意図的に行なっていると見られています。そのため、今後ある程度の期間は現在の市場価格が維持されると予測されています。

おわりに

世界経済にも大きな影響を及ぼしつつある原油価格の低迷ですが、産油国の思惑も踏まえると当面は上がる見込みはないと言えます。
原油価格の低迷が世界経済に与える影響はどこまで広がるか予測できないため、今後の世界経済の動向の中でも最も注目するべきトピックと言えるでしょう。