「サウジアラムコ」とは何者なのか

2016年の年明けまもなく、世界の金融市場に大きな衝撃が走りました。
世界最大の原油埋蔵量を誇るサウジアラビアの国営企業「サウジアラムコ」が、IPO(Initial Public Offering = 新規株式公開)を検討していると各通信社が一斉に報じたためです。
世界の株式市場に大きなインパクトを与えることとなったこの報道の背景には何があるのでしょうか。その内容を見てみましょう。

そもそも「サウジアラムコ」とはどのような企業なのでしょうか。
先にも触れたように、サウジアラムコは中東産油国であるサウジアラビアの国営企業であり、最新の確認埋蔵量では原油が2,611億バレル、天然ガスが294兆立法フィートと世界一の資源保有量を誇り、これは現在上場している中でも資源保有量のもっとも大きいエクソン・モービルの10倍の資源保有量と言われています。

このサウジアラムコの発端となる企業は、アメリカ資本のスタンダート石油カリフォルニアが株主となって1933年に設立されたCASOC(California Arabian Standard Oil Company = カリフォルニア・アラビアン・スタンダード石油)です。このときに結ばれた利権の対価は、毎年5,000ポンドと原油生産が成功したときに支払う50,000ポンドと、現在の基準では考えられないような破格の安さでした。
第二次世界大戦後に中東での原油生産が軌道に乗ると、サウジアラビアはCASOCの国有化をゆるやかに進めています。1986年にサウジアラビアの石油担当大臣となったヒシャーム・ナーゼルにより、1988年に現在のサウジアラムコが設立され、完全国有化が達成されました。

原油依存の経済構造から脱却を急ぐ中東産油国

サウジアラムコに代表されるように、中東産油国では原油生産会社の国有化を進めています。なぜ民間に任せる世界の潮流に逆らい、企業の国有化を進めているのでしょうか。

いくつか理由はありますが、もっとも大きなものとしては将来の資源枯渇への備えと、膨れ上がった政府支出に対応するための2つの理由が考えられています。採掘技術の向上により、原油資源の可採掘年数はここ数十年40年から50年程度で変わっていませんが、将来的には枯渇するのは確実と考えられています。そのときに原油輸出に頼りきりの経済構造をしていると、原油枯渇と同時に歳入が途絶えて国家消滅に繋がりかねないため、中東産油国は資源輸出で得た莫大な資産を運用することで国家の存続を狙っています。

更に、安定した資源輸出による得た莫大な資産を湯水のように使い、国民に対して主要国以上の高度な社会福祉を実現するためのコストが馬鹿にならず、現在進行形で政府支出を圧迫していることも企業の国有化を進めている大きな要因と考えられています。

世界の金融市場で大きな存在感を発揮するようになった政府系ファンドとの関係

このように国有企業のもたらす莫大な利益を活用するために、中東産油国は競ってSWF(Sovereign Wealth Fund = 政府が出資する投資ファンド)を設立し、株式から最先端の金融先物まで様々な金融商品の運用を行うことで、更に巨額の利益を生み出しています。特に株式市場での存在感は大きく、主要国の株式市場の外国人投資家のかなりの部分をこのSWFが占めているとも言われています。

急激な原油価格の下落に悩まされる中東産油国

これまで原油輸出と資産運用で莫大な利益を積み上げてきた中東産油国ですが、近年では原油価格の急激な下落と長引く金融市場の不安定化により、これまで積み上げてきた利益を切り崩すことを余儀なくされています。
財政赤字を貯蓄の取り崩しで埋められる「財政バッファー」は一部の国を除くと数年程度の余裕しかないため、このまま原油価格の低迷が続くと利益の切り崩しも限界を迎えます。
そこで当座の危機を凌ぐために、現在でも原油輸出で莫大な利益を生み出し、成功すれば巨額の現金収入が期待できるサウジアラムコのIPOが検討されているのです。

おわりに

市中在庫のダブつきにより大きな打撃を受けている中東産油国の財政状況ですが、OPECでは生産シェアを維持するために、現在の生産量を減らさない方針を打ち出しています。
今後もイランの国際社会の復帰にともなう更なる在庫のダブつきなど、原油価格をめぐる話題は今後もしばらくは尽きることがなさそうです。