シェール革命をはじめとする技術革新や世界経済の減速による需要の低迷など、様々な要因により原油価格は高騰と投げ売りの間を行き来する迷走状態が続いています。
消費国の経済動向に大きな影響を与える原油価格の迷走は、消費国以上にOPEC加盟国をはじめとする中東産油国に大きな影響を与えています。
今回は原油価格の迷走が中東産油国に与える影響を見てみましょう。

中東産油国とはどのような国々か

現在では原油価格の決定権は市場に委ねられていますが、依然として大きな影響力を持っているのがOPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries = 石油輸出機構)加盟国を中心とする中東産油国です。
地理的な条件から地球上で資源として採算が取れるだけの原油が産出する地域は、南北アメリカ・東南アジア・中東地域に集中しています。これらの地域の中でも特に原油輸出を主要産業としているのが中東・中東産油国であり、これらの国の動向によって原油の市場価格は大きく左右されます。
原油は現在の社会には欠かせない天然資源の1つであり、その原油価格の決定権に大きな影響力を維持することで、中東産油国は「石油王」と言われるほどの富裕層を数多く生み出すほどの富を手に入れたのです。

原油価格の迷走と収入源の多角化

中東産油国の富の源である原油は、価格決定権が取引市場に握られているため、取引市場の価格決定に対して産出量を調整することで大きな影響力を行使できますが、取引価格そのものを決定することはできません。
そのため1990年代を通して1バレル=30ドル台で安定していた原油価格は、2000年代に入ると新興国の経済成長に伴う需要拡大の影響を受けて急騰し、1バレル=90ドル台を記録します。2008年には世界金融危機により大きく値を下げましたが、その後も2010年代に入るまで高騰は続きます。
しかし2010年代に入るとアメリカを中心とするシェール革命により需要に対して供給が大きく上回り、シェール革命によって生産された原油が本格的に市場に供給されはじめた2015年になると、1バレル=40ドル台まで急激に下落します。

このように原油価格は取引市場の需給関係に大きく影響されるため、中東産油国は資源収入以外の収入源の確立を急いでいます。
特に力を入れているのは沿岸部のビジネス・観光資源の開発と、金融資産の運用です。
ビジネス・観光資源開発の有名な例としては、世界一高いビルとしてギネス記録にも乗った「ブルジュ・ハリファ(828メートル)」を中心とするダウンタウン・ドバイが有名です。
これ以外にも各国の沿海部には様々な地域開発計画が進められているため、世界中の企業が進出の機会をうかがっているとも言われます。

もう1つの目玉である金融資産の運用は、長年の資源採取によって蓄積された膨大な余剰資金を国際金融市場に投入することで運用益を確保することをめざしています。
その資金量は大手証券会社や保険会社でも太刀打ちが難しく、オイルマネーとも呼ばれる資金の行く先は株式・為替市場に大きな影響を与える機関投資家の中でも有力なものとして注目されています。
中東産油国が国策として行なっている金融資産の運用で有名な部門としては、アブダビ投資庁やクウェート投資庁があげられます。

この先富裕国は生き残れるのか

見てきたように天然資源だけに限らない収入源の確立を目指している中東産油国ですが、実際に成果をあげているかは微妙な部分があります。
ビジネス・観光資源開発は順調に進んでいるものの、先進諸国のシェアを奪うほどではなく、金融資産の運用も2008年の世界金融危機で大きな損失を被ったことが明らかになるなど、世界経済に大きく左右される構造は原油輸出と大きく変わりません。

おわりに

原油の市場価格の混乱や新たな収入源として育てているビジネス・観光資源の不調、更に近年急激に浮上してきたイスラム過激派による中東地域の不安定化の悪化など、中東産油国は様々なリスクに見舞われています。
今後の国際情勢次第では更なる悪化も予想されるため、原油価格の動向とともに注視したい地域の1つと言えるでしょう。