2015年夏の平和安全法制(安保法案、戦争法案をめぐる議論の中でにわかにクローズアップされたのが、中東・ホルムズ海峡です。
自衛隊の海外派遣による活動の可能性がもっとも高い地域として上げられたホルムズ海峡ですが、どのような役割を果たしているのでしょうか。今回はホルムズ海峡をめぐる事柄を見てみましょう。

そもそもホルムズ海峡とはどのような地域か

最初にWikipediaから引用して、ホルムズ海峡の概要を見てみましょう。

ペルシア湾とオマーン湾の間にある海峡である。北にイラン、南にオマーンの飛び地に挟まれている。水深75m – 100m、最も狭いところでの幅は約33km。イラン本土近傍のゲシュム島やホルムズ島をはじめとして、複数の島が海峡内にある。
ペルシア湾沿岸諸国で産出する石油の重要な搬出路であり、毎日1700万バレルの石油をタンカーが運ぶ。日本に来るタンカーの全体の8割、年間3400隻がこの海峡を通過する。船舶の衝突を避けるため幅3kmずつの航行出入レーンが設けられている。オマーン領ムサンダム半島の先にある小島のレーダーで航行を監視している。

イラン・イラク戦争時にはタンカー攻撃や海峡封鎖があった。現在は、イランの核開発問題のため、イランと欧米・湾岸アラブ諸国との間で緊張が高まっており、アメリカ海軍が展開している。これに対抗して、イランも定期的に海峡で軍事演習を行っている。
ホルムズ海峡 – Wikipedia

このようにホルムズ海峡は、日本の原油輸入の最重要ポイントと言える地域でありながら、現在でも国際紛争の争点となっている非常に危うい地域です。
ホルムズ海峡は日本だけではなく中東の産油諸国にとっても死活的に重要な地域であり、海峡封鎖による原油輸出の途絶を防ぐためにアラブ首長国連邦(UAE)では、船舶輸送以外の手段として海峡迂回パイプラインの建設を進めました。
2016年時点で実働しているこのパイプラインは、日量150万バレルの輸送量があり、UAEの産油量の7割程度を輸送できると言われています。

ホルムズ海峡をめぐる中東諸国と国際社会の関係

このように日本や中東産油諸国にとって死活的に重要な地域であるホルムズ海峡ですが、もっとも懸念されていたのが「イランによる海峡封鎖の可能性」です。

1979年のイラン革命でそれまでの王政からイスラム制に移行したイランは、アメリカによる様々な制裁の対象となってきました。イラン側も独自の核開発の推進や米軍を想定した演習を行うなどの強硬姿勢を崩さなかったため、欧米諸国は共同で経済制裁を課していました。
2015年に結ばれた包括合意によって2016年時点では経済制裁は中断され、徐々に交流も再開しつつありますが、包括同意が完全に履行されるかは疑わしいものがあるため、イランによる封鎖の可能性はなくなったとは言えないのが現状です。

また、2003年のイラク戦争に続く治安維持に失敗したために勢力を増しているISILに代表されるイスラム過激派によるテロ行為による安全な海峡通過が脅かされる危険性も生じているため、今後とも国際社会の中で注目される地域でありつづけるでしょう。

議論されていたホルムズ海峡封鎖の可能性はあるのか

このように様々なリスクがあると言われているホルムズ海峡ですが、実際に封鎖の可能性はどの程度考えられているのでしょうか。

もっとも可能性の高かったイランによる封鎖の可能性は、2015年の包括合意によって完全になくなったわけではないものの、ひとまず遠のきました。
代わって浮上しているのが、2003年のイラク戦争に続く治安維持の失敗によって急速に勢力を伸ばしたISILやアルカイダをはじめとするイスラム過激派によるテロ・海賊行為です。
海上輸送に対するテロ・海賊行為は既に世界各地で大きな問題となっていますが、仮にイスラム過激派がホルムズ海峡でテロ・海賊行為を行うとなると、その影響は計り知れないものがあります。

おわりに

2015年夏の国会での議論でにわかに話題になったホルムズ海峡ですが、その危険度はイラン革命以後、大きく変わっているとは言えません。
これまでと変わらず、世界の火薬庫と化している中東の中でも、特に注目するべき地域の1つと言えそうです。